ほっこりするような、少し悲しい物語。
本日は焼津市に残されている、そんなお話を致しますね。
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大正時代の物語です。
大富の中根という所に『徳太郎』さんという人が住んでおり
ました。徳太郎さんは金物屋を営み、妻と二人暮らしで子供は
いませんでした。遠州へ商いへ行った時、白羽という村で
三毛猫の仔をもらったので、その猫を我が子のように
可愛がっていました。
十数年が過ぎたある日のこと。
徳太郎さんの妻が病気になり高熱が何日も続きました。
医者が言うには「これは二十日熱なので長くかかりそうだ」
との事。見舞いに来た人がこれを聞き「二十日熱には水鳥
の肉がいいそうだよ」と教えてくれました。
しかし水鳥といってもどうして手に入れたら…
奥さんは熱で朦朧としながら、
そばで心配そうに見つめていた三毛にこう独り言を言いました。
「三毛や、お前は鼠を取るのが上手いが水鳥では困ったなぁ…」
次の日の朝です。
「にゃーん、にゃーん」
三毛がしきりに手を触り、意味ありげに鳴いているので
目を覚ますと枕元にはなんと水鳥が置いてあるではないですか。
「……三毛、お前が持ってきてくれたのね。ありがとう」
嬉しくなった奥さんは三毛に優しく声をかけました。
早速水鳥の肉を食べると奥さんはすっかり元気を取り戻しました。
しかし水鳥を捕ってきた三毛は身体が濡れて風邪をひき、
それが元で死んでしまったのです。大正十四年一月の出来事です。
夫婦は三毛をあわれに思い、
左招き猫の像を造ってお祀りをしました。
かつて夫婦の住んでいた場所の近くには今もなお、
この招き猫が残されているそうです。
--(物語参考:企画展『やいづの昔ばなし』冊子を元に作成)
写真掲載しました。
この物語に出てくる招き猫の像です。
→ http://ajiteiseruna.blog.fc2.com/blog-entry-320.html
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