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2019年07月07日 (日) | 編集 |
本日は七夕。たくさんの記事の更新すいません。
過去の記事をちょっとだけ編集しなおして再掲しておきます。


日本には、数々の七夕の物語があります。
七夕に登場する『彦星』のモデルとなっている者が存在し、
それは一説には古事記に登場する、高天原を裏切った『天若日子』
なのだとか。

今回は室町時代の『御伽草子』(短編のお話が幾つも詰め込まれ
たもの)を紹介しようと思います。その中には『天稚彦草子』
という七夕の物語があり、この物語の『天稚彦』と呼ばれる人物
も天若日子だと言われているようです。

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天稚彦草子

むかしむかしのお話です。
とある村の長者の家に、若くて美しい三人の娘がおりました。
ある日のこと、長者の家の前の川で下女が洗濯物をしていると
恐ろしい大蛇が目の前に姿をあらわし口から手紙を吐き出し
こう言ったのです。
「言う事を聞かねば絞め殺す。この手紙を長者に渡せ」
下女は大蛇に言われた通り、長者にその手紙を手渡します。
恐る恐るそれを開いてみると…

「お前たちの娘を嫁に寄越せ。さもなくば絞め殺してやる」

これに驚いた両親が長女に問うと、
「例え父様と母様が殺されようと蛇の嫁になるのは絶対嫌!」
と拒否。次女に聞いても「私もイヤです」とこれを拒否。
残った末娘に泣く泣く問うと「父様と母様が殺されてしまう
のならば、私が蛇の嫁になります」と自らが犠牲になる事を
申し出たのです。言われた通り指定された池の前に家を建て、
末娘が震えながら待っていると、轟音と共に大蛇がその姿を
あらわしました。覚悟を決めた娘に大蛇が言いました。

「私の姿を見ても恐ろしいと思わないでくれ。
 刀を持っているのならば、どうか私の頭を斬って欲しい」


…言われるままに娘は蛇の頭を斬ります。
すると何という事でしょう。中から出てきたのは見目麗しい男
ではないですか。娘は怖かったことなどすっかり忘れて、
「天稚彦」と名乗るその男と相思相愛の仲になり、
何の不自由も無い幸せな暮らしを送る事となります。

それから暫く経った日のこと、妻は夫からこう告げられます。
「実は私は天からやって来た海龍王。少し用事があり戻らねば
ならなくなった。7日で帰る予定だが戻って来なければ27日、
それでも来なければ37日を待ってくれ。それでも帰らなければ
一夜ひさごに乗り天に昇って私を訪ねてくれ。
それとこの箱をお前に預ける。だが絶対に開けてはならない。
開けたら私は本当に帰れなくなるからな」
自分の正体を明かした天稚彦はそう言い残し妻に唐櫃を預け、
天に昇っていきました。

妻は約束を頑なに守っていたのですが、
どこで聞きつけたか「あの時怖がって損したわ!」と、
妹の幸せを妬んだ姉たちがやって来て家の中を勝手に物色。
唐櫃を見つけた姉が、妹から鍵を無理やり奪い取り、
「この箱を開けてはならぬ」の禁忌が破られてしまいます。
唐櫃の中には何も無くただ煙が空に立ち昇るだけでした。

そんな事があってから、27日、37日と経ち…いくら待っても
夫は帰りません。心配になった妻は夫を探しに言われた通り
一夜ひさごに乗り天に昇ります。星々に夫の行方を聞きながら
ようやく再会することが出来たのですが、やっと見つけたと
思った夫の口から衝撃的な一言が。

「私の父は恐ろしい鬼なのです。
 見つかればあなたは殺されてしまうだろう」


天稚彦は父がやって来ても、妻が殺されないよう扇や枕など
ありとあらゆるものに変化させ、何とか人間がやってきた事が
バレないように隠し誤魔化し続けるのですが、ついには
「何か人間臭いぞ…」と鼻のいい父に発見されてしまいます。
「父上、お願いです!どうかこの結婚を許してください!」
「人間と結婚だと?!そんな事は絶対に許さん!」
激昂する父に天稚彦は必死に妻を庇います。
父は「どうしてもと言うなら」とある条件を出してきました。

「人間よ、俺の出す問題をクリアしたら結婚を許そう」

言いつけられる問題は簡単なものではありませんでした。
「千頭の牛を面倒見ろ。昼は野に放ち、夜は牛舎に入れろ」
「蔵にある千石の米を即刻別の蔵に移せ。一粒足りなければ
全ての米粒が揃うまで探し出せ」などいう無理難題を妻は、
天稚彦の父からふっかけられるのですが、夫の助けにより
これらの難題を次々にクリアしてゆくのです。
百足の蔵に閉じ込めても蛇の蔵に七日閉じ込めても娘は無事に
還ってくる。これには鬼である父も流石に感心してしまい、
結婚を認めざるをえませんでした。

「こうなっては仕方が無いな、
 月に一度なら逢うことを許してやろう」


この言葉を聞き間違えた天稚彦の妻は、
「お義父様が一年に一度と仰るならばわかりました」
と了承してしまいます。鬼は「ああ、ならば一年に一度だ」
と持っていた瓜を地面に叩きつけ、二人の間を隔てる大きな川
を作りました。この川が天の川となり、二人は年に一度の
7月7日のみに逢えるようになったのです。


-----------------------(終わり)

【ひとこと】
鬼が天稚彦の嫁に苦難を押し付ける場面は、
「古事記」のスサノオと葦原色許男神(後の大国主)のエピソード
に似ているなぁと思いました。あちらは嫁に助けられる話ですが、
苦難の内容と助かる方法が両方共そのまんまな感じなので、
この共通点は非常に興味深いです。

どうでもいいけど長女と次女があまりにクズ過ぎない?

【おまけ】こんなのも如何?
室町時代末期に書き写された御伽草紙『貴船の物語』。
http://kifunejinja.jp/monogatari/
こちらは鬼の娘と地上の若者の恋物語です。


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テーマ:日本文化
ジャンル:学問・文化・芸術
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