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2021年07月07日 (水) | 編集 |
日本には数々の七夕の物語があります。
七夕の「彦星」にはモデルとなっている者が存在し、
それは古事記に登場する、高天原を裏切った「天若日子
だとも言われているようです。

本日は室町時代の『御伽草子』をざっくり紹介。
その中には「天稚彦草子」という七夕の物語があり、
ここに登場する「天稚彦」と呼ばれる人物もまた一説には
天若日子がモデルとなっていると伝えられています。

20210630_焼津神社_夏越大祓_006

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天稚彦草子
むかしむかしのお話です。
とある村の長者の家に、若くて美しい三人の娘がおりました。
ある日のこと、長者の家の前の川で下女が洗濯物をしていると
恐ろしい大蛇が目の前に姿をあらわし口から手紙を吐き出して
こう言いました。
「この手紙を長者に渡せ。言う事を聞かねば絞め殺すぞ」
下女は大蛇に言われた通り長者にその手紙を渡します。
恐る恐るその手紙を開いてみると…

「お前たちの娘を俺の嫁として捧げろ。
 嫌だというのなら食ってしまうぞ」


これに驚いた長者が長女に問うと、
「父様と母様が殺されようと蛇の嫁になるのは絶対にイヤ!」
次女に聞いても「私も蛇の嫁なんてイヤです!」と拒否。
残った末娘に泣く泣く問うと「父様と母様が殺されてしまう
のならば、私が蛇の嫁になります」と自らが犠牲になる事を
申し出たのです。言われた通り指定された池の前に家を建てて
末娘が震えながら待っていると、轟音と共に大蛇がその姿を
あらわしました。覚悟を決めた娘に対し大蛇が言いました。

「私の姿を見ても恐ろしいと思わないでくれ。
 刀を持っているのならば、どうか私の頭を斬って欲しい」


言われるままに蛇の頭を斬ると…何という事でしょう!
中から出てきたのは見目麗しい男ではないですか。
娘は怖かった事などすっかり忘れ「天稚彦」と名乗るその男と
相思相愛の仲になり、何の不自由も無い幸せな暮らしを送る事
となったのです。

それから暫く経ったある日、妻は夫からこう告げられます。
「実は私の正体は天からやって来た海龍王。少し用事があって
天上に戻らねばならなくなった。7日で帰る予定だがもしも
戻って来なければ27日、それでも来なければ37日、それでも
帰らなければ一夜ひさごに乗って天に昇り私を訪ねるといい」
正体を明かした天稚彦は唐櫃を妻に渡し、続けて言いました。
「この箱をお前に預ける。だが絶対に開けてはならない。
開けたら私は本当に戻れなくなるからな」と、
そう言い残し天に昇っていきました。

妻は頑なにその約束を守っていたのですが、
どこで聞きつけたか妹の幸せを妬んだ姉たちがやって来て
家の中を勝手に物色。唐櫃を見つけた姉たちが鍵を無理矢理
奪い取り「この箱を開けてはならぬ」の禁忌が破られて
しまいます。しかし唐櫃の中には何も無く、
ただ煙が空に立ち昇るだけでした。

そんな事があってから27日、37日と経ち…
いくら待っても夫は帰りません。心配になった妻は夫を探しに
言われた通り一夜ひさごに乗り天に昇ります。星々に夫の行方
を聞きながらようやく再会することが出来たのですが、やっと
見つけたと思った夫の口から衝撃的な一言が。

「私の父は恐ろしい鬼なのです。
 見つかればきっとあなたは殺されてしまうだろう」


天稚彦は父がやって来ても妻が殺されないよう扇や枕など
ありとあらゆる物に姿を変化させ、何とか人間がやってきた事
がわからないよう隠し誤魔化し続けるのですが、ついには
「何か人間臭いぞ…」と鼻のいい父に発見されてしまいます。

「父上、お願いです!どうかこの結婚を許してください!」
「人間と結婚だと?!そんな事は絶対に許さん!」
激昂する父に対し、天稚彦は必死に妻を庇い護ります。
「どうしてもと言うなら」と父はある条件を出してきました。

「人間よ、これから俺のいう事全て出来たら結婚を許そう」

言いつけられる問題は簡単なものではありませんでした。
「千頭の牛を面倒見ろ。昼は野に放ち、夜は牛舎に入れろ」
「蔵にある千石の米を即刻別の蔵に移せ。一粒足りなければ
全ての米粒が揃うまで探し出せ」などいう無理難題。
妻は、夫の助けによりこれらを次々にクリアしていきます。
百足の蔵に閉じ込めても蛇の蔵に七日間閉じ込めてもどんな事
をしても無事に還ってくる。これには鬼である父も流石に感心
してしまい、結婚を認めざるをえませんでした。

「こうなっては仕方が無い。
 月に一度ならば逢うことを許してやろう」


この言葉を聞き間違えた天稚彦の妻は、
「お義父様が“一年に一度”と仰るならばわかりました」
と了承してしまいます。鬼は「ああ、ならば一年に一度だ」と
持っていた瓜を地面に叩きつけ、二人の間を隔てる大きな川を
作りました。この川が天の川となり二人は年に一度の7月7日
のみ逢えるようになったということです。

-----------------------(終わり)

鬼が天稚彦の嫁に苦難を押し付ける場面は、
「古事記」のスサノオと葦原色許男神(後の大国主)の
エピソードに似ているなぁと思いました。あちらは夫が嫁に
助けられるパターンですが、百足が居る蔵や蛇が居る蔵に
閉じ込める辺りも同じ。この共通点は非常に興味深いです。

ところで、大蛇の中からイケメン出てきて
コロッと気持ちが変わる末娘には「アレっ?」な感じですが、
蛇との結婚を拒否しておきながら妹がいい暮らしを送っている
と知るや否や押しかけてきて唐櫃ブン取る長女と次女が
あまりにクズ過ぎやしませんかね。
あと天稚彦、衝撃的な事いきなりカミングアウトしすぎw


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コメント
この記事へのコメント
面白いお話ですね
おはようございます。
このお話は知りませんでしたが面白いですね。
やってはいけないと言われていたことをしてしまうとか、
兄弟がいると必ず末っ子が主人公になるとか、
ハズレくじを引いたと思っていたら大正解だったとか、
どこかで聞いたような話が混じっています。
伝承の話はどうしてもそうなるのかもしれません、そこがとても興味深いです。
あと、一か月に一度と言ってたのを一年に一度と聞き間違って、
不利になったのに知らんふりしてそこで終わってる、そこは更に興味深いですね。
2021/07/08(Thu) 08:30 | URL  | tomabi #Fs3vuqXc[ 編集]
Re: tomabiさん
こんにちは、いらっしゃいませ。
いつもコメントありがとうございます♪

最初から最後まで昔ばなしの王道で、物語を作りやすい当時のテンプレートのようなものがあったのかも知れませんね。特に「〜をしてはいけない」の禁忌(最終的にはそれが破られてしまう)が出てくるパターンは万国共通で面白いです。
関連してこんな過去ログをどうぞ。
http://ajiteiseruna.blog.fc2.com/blog-entry-178.html
2021/07/08(Thu) 10:33 | URL  | SERUNA★静岡 #-[ 編集]
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